
Funghi きのこ
2006年 10月
キノコは世界中で愛されている食材ですが、種類によっては世界中に広がっているものがある一方、一つの大陸や非常に狭い地域に限られているものもあります。そのため使うキノコの種類や調理方法によって料理には様々な地域性が表れます。和食や洋食、中華料理など幅広く使われ、一般的に焼く、蒸す、炒める、のほか、炊き込みご飯に使うなどの調理方法があります。キノコは野菜でなく多くある菌類の一種で、他の生物や死骸に共生もしくは寄生しています。世界には約1万種類もあり、食用になるのは約1000種類ほどになります。様々な形があり食用キノコでもサンゴ型、袋に包まれたもの、大型で20キロになるものまであります。日本では3000種ほどあり、好んで食べられるものは約100種類ですが、栽培の対象となるキノコ類はまだ30種ほどです。毒キノコは意外に少なく50種類程度です。キノコの発生は雨の多い梅雨の頃と、気温の低下する秋で、種類によって発生する時期や場所は、ほぼ決まっています。また天候により発生量が変わるので、雨の多い冷涼な年は収穫が増え、暑い夏はキノコにとって厳しい環境となるため例年に比べると収穫量が減ります。これはブドウを栽培する理想の環境と逆になります。イタリアなどのワイン産地では、高品質なワインが造られる年はポルチーニやトリュフなどの収穫量が少なくなり、キノコが豊作の年のワインは品質が低くなってしまいます。これは世界中の美食家にとって悩ましい問題です。キノコに対する嗜好は民族や地域によって違いが見られす。欧米では味に特徴のあるキノコが、日本では味や香りのほか、歯ごたえの良いものが好まれる傾向があります。キノコの人気は年々上昇しており、その理由として特有の香りや旨みなど味の面はもちろん、健康に対する関心の高さがあります。きのこ類の一般成分は野菜類に似ていますが、食物繊維、ビタミンB、ビタミンD2、ミネラルなどが豊富で低カロリーであることから、成人病の予防効果もあると考えられます。他には栽培技術の向上により、様々なキノコが市場に出回るようになったことも理由の一つです。シイタケ栽培の歴史はまだ400年ほどしかなく、当初はクヌギの原木にナタで傷をつけるだけの原始的なものでした。効率的なキノコの人工栽培が始められたのはまだ最近のことです。ブナシメジやマイタケの人工栽培が成功したのはここ30年で、マイタケはそれまで幻のキノコと呼ばれ高価なものでした。マツタケは近年、栽培地の環境の変化と共に収穫量がピーク時の約30分の1にまで激減したため、もっとも人工栽培が期待されているキノコですが、生きた樹木と共生しているため、シイタケのように原木を使った栽培は出来ず、まだ実現に至っていません。ですがマツタケやトリュフの人工栽培の研究をしている農家や大学も多く、努力が実れば近い将来より身近に使える食材になるかもしれません。
Tartufo トリュフ
2004年 12月
トリュフは日本語で西洋松露と呼ばれ、キャビア・フォアグラと並び世界三大珍味の一つとされているきのこです。トリュフという名称が文書に認められるのは紀元前16世紀。当時は地中から現れる、強烈な香りの奇妙な食べ物として消費されていました。またギリシアやローマ帝国でもトリュフは重宝され、スメリ族はダイエットに使っていたようです。しかし、あまり昔の起源を示す文献が少なくその誕生はミステリアスです。ローマ帝国が東西に分裂し、キリスト教徒の支配が続き、フランス料理が復活する14世紀になるまで歴史的書物にその名は登場しません。中世期が終わるまでまさに忘れられた存在であったのです。そして未だにトリュフの起原は特定されておらず、一般的な学説では、トリュフは植物か動物かも定義する事のできない不思議なものと理解されています。時代によっては(その硫黄質の匂いから)悪魔や魔女の食べ物と定義される事もありました。地中に埋もれていることから探すのが難しく、収穫にはトリュフを好む豚や訓練された犬を使って探し出します。「食用のダイアモンド」として重宝されていますが、その仲間は広く世界に分布されているにもかかわらず、食用として有名なのは黒トリュフ、夏トリュフ、白トリュフなどの数種類にしか過ぎません。また人工栽培が不可能とされているため、その人気にかかわらず収穫量が少く非常に高価な食材として取引されています。黒トリュフはダイアモンドカットのような表面を持つことから黒いダイアモンドと呼ばれ、広い範囲で収穫されます。品質ではフランスのペリゴール産が有名で、料理には加熱して使われます。夏トリュフは見た目こそ黒トリュフに似ていますが、中の断面が違い品質では黒トリュフに劣ります。トスカーナではどの森でも簡単に見つけられます。白トリュフは他を圧倒する最高級食材になり、その多くはイタリア、ピエモンテ州のアルバで取れます。調理方法は黒トリュフの加熱するのに対して、ほとんどが生のままで使われます。世界中の美食家達が愛するイタリア産の白トリュフはフランス産の黒トリュフの10倍以上の値がつきます。オークションでは1.08キロの白トリュフが出品され、ロンドンのレストラン「ザフェラーノ」が5万2000ドル(約546万円)で落札。そして1.58キロが12万5000ユーロ(約1900万円)で中国人によって落札されました。これは白トリュフの過去最高値になりますが、この不思議なきのこがどれだけ料理業界に対して、影響力を持っているかをうかがうことが出来るエピソードです。