Verdure di Kyoto 京野菜
2007年 9月
元来和食材料の京野菜ですが、最近では洋食・中華とジャンルを超えた食材として注目を集めています。そもそもなぜ“京都”なのでしょう。大都市周辺には、市民に供給する野菜の産地が多く見受けられます。権力都市・大規模生産都市として、大きく変貌した東京や大阪とは少し趣を異にする京都は、今日でも市内のあちこちで野菜が多く作られています。また他の都市に比べ特産品種と呼ばれる野菜が多いといわれます。平安京以来の都であった京都には、全国から献上品や商品として色々な物資が集まり、その中には野菜も含まれていました。それらの種や苗が京都の農家に渡り、相当な種類の野菜が栽培されました。比較的温暖な気候や肥沃な土地と良質の水が野菜の生育に適していました。今でも京都産の野菜は栄養価が高いといわれます。ただし、時の流れと共に環境や人々の嗜好に合わない物は、自然と姿を消していきました。ある意味、美味しいと認められた物ゆえに今日まで残り、人気を得ているのかもしれません。現存する野菜ではセリとネギが一番古く、平安京以前から栽培されていたとされます。京都は寺社仏閣が多く、又大宮人と呼ばれる公家と町衆の文化が同居する町でした。食を取ってみても宮中の有職料理、寺院の精進料理、茶道の懐石料理、おばんざいと呼ばれる庶民の味が、今の京料理の元になっています。海から遠い京都では、野菜が中心の食生活になります。味にうるさい上層階級に満足してもらうため、農家はより美味しい野菜を作る努力をしました。また、京都では祭事にも野菜が深く関わっています。厄除や家族繁栄、健康を願い、きゅうりやかぼちゃ、大根等を用いた行事が年中を通して行われ、多くの人が神社仏閣に参拝します。近郊農家が朝、自分の畑で採れた野菜を荷車に積み、街中で売り歩く“振り売り”と呼ばれる光景を目にします。近年、京野菜の名が全国に知られ需要も増えています。有名なものでは賀茂茄子、聖護院蕪、九条ねぎ、万願寺唐辛子、堀川ごぼう等々。1987年京都府が34種の“京の伝統野菜”を選定しました。いわばイタリアのDOC、DOPと同じく原産地呼称制度により、その地域の個性を守る役割を果たしています。府内全域を対象に、明治以前に導入された品目で絶滅した物も含む細かな定義です。京野菜は決して全国流通を目的にした物ではありません。品種改良や、農薬を増やして農作業の効率化を図ることはせず、昔ながらの姿かたちと味を守り後世に伝える農家。生み出された物を食生活や伝統行事に活かし、続けていく人々。まさにスローフードの目指すものと共通しています。京野菜もまた、歴史が生み出した財産の一つと言えるでしょう。