コルクについて
Articolo del Tappo

「ワインにまつわるお話」へ

コルクについて 1

2005年 12月

   コルクとはいったい、いつ頃からワインのボトルに使われているのでしょうか。一般的には最近になってからだと思われがちですが、その起源はずいぶん古くになります。ローマ時代には素焼きの壷にワインを入れることもあったようですが、壷の口のところには栓として詰めものがされていたようで、コルク状のものが使用された形跡もあるということです。ただしその後は詰めが主流となり、樽のまま売買されて飲む直前にカラフェに移す事が一般的になり近代まで続きました。樽詰めのワインをビンに詰め直して売買するようになったのは、ワインの産地ではないオランダやイギリスがワインを大量に消費するようになってからで、コルクによってしっかりと栓がされるようになったのも17世紀のこうした国々においてだろうと言われています。初期のコルクスクリューの多くが、ワイン産地ではなく、むしろオランダやイギリスで作られたのにもこうした理由があるからです。また大航海時代にポルトガルやスペインの巡礼者たちが移動の際に壷やビンにコルクの栓をしてワインを運びました。ポルトガルを中心にした地中海地方に原生するコルク樫の内皮がコルクですが、安定した弾力性・耐水性にすぐれた特性がビンに詰めた飲料の長期保存に適するということでワインボトルに使われるようになったということです。現在のコルク生産は樹齢80〜90年のものを使い、最大の生産地はポルトガルです。世界中で70%以上のシェアを占め次いでスペイン、イタリアと続きます。イタリアではコルク生産のほとんどがサルデーニャで行われており全体の90%を占めています。生産工程では微生物を取り除く為、乾燥、消毒、ブリーチ(漂白)の順番に工程を行います。おおまかに分け塩素ブリーチ、過酸化水素ブリーチ、亜硫酸ブリーチの3種類になります。塩素ブリーチはトリクロロ・アニゾールという菌が発生しやすく、コルク臭(ブショネ)が付いてしまう可能性が高いため最近ではあまり使われなくなりました。現在一番利用されるのが過酸化水素ブリーチで、オキシドールを使います。適度に漂白され見た目も美しいコルクになります。亜硫酸ブリーチは漂白効果を押さえコルクが自然な仕上がりになります。亜硫酸は酸化防止剤(SO2)として、長期熟成を円滑に促すため、ほとんどのワインにも入っているものなので、コルクにも安全に使用できます。ブリーチを施したコルクの外側にシリコンなどでコーティング仕上げをすることにより、ボトルとの隙間をきっちり封じてくれます。

コルクについて 2

2006年 1月

   各ワイナリーとも、ワイナリー名はもちろんのこと、ヴィンテージやトレードマークなど、ワインのもうひとつの顔として工夫をこらしているわけですね。何気なく捨てていたコルクも改めて観察すると、そのワイナリーの歴史や思い入れが伝わってくるものです。どうしてワインによってコルクの長さが違うのでしょうか?最近は高級そうに見せるために使われることもありますが、基本的には10,20年に及ぶ長期熟成させたいプレミアワインには長いコルクが使われ、早飲みのタイプには短いコルクを使います。フランスの一級シャトーやブルゴーニュ等の高級ワイン、イタリアではアンジェロ ガイアのロングコルクが有名です。良いワインになるほど長くなるわけです。安いクラスでは1つ25円前後、長期熟成用の長いタイプになると110円前後です。ですがワインのためにと思い長いタイプを選んだからといって、うまくいくとは限りません。今後どのようになるかわかりませんが、コルクのあり方が見直されつつあります。それはコルク栓の金額がここ最近上がっていることと、外気などの影響を受けやすいからです。ワインはコルクを通して、空気中の微量な塩化化合物やカビなどによって影響を受けています。深刻な場合には、コルク自体に湿ったような悪臭がついてしまうことがあります。その結果ワインに匂いが移ってしまい、どれも良く似た鼻に残る不快感があり、風味がそこなわれることになってしまいます。これがブショネで、イタリア語ではサディタッポと呼びます。ワインを保存するためにボトルとそれに栓をするコルクが発明されたときは、ワイン界の革命ともとらえられ歓迎されました。ですがコルクは万能ではなく洗浄技術などが発展した現代でさえ起こりうるブショネに長い間悩まされ続けました。残念なことですがこれはどのようなコルクであっても3%以上は起こるといわれ、ワイン自体や保存にまったく関係なくコルクにつくカビのせいで、中身を台無しにしてしまうからです。もちろんワイナリーのせいではありませんが、事情を知らないお客様は生産者や輸入業者を非難します。そこで代わりになるのではないかと期待されだしたのが、ビニール樹脂でできた合成コルクでした。コストが安く、ブショネは100%起こらないところが受け入れられました。

これからのコルク

2006年 2月

   ブショネが起こらない合成コルクが作り出されたことを説明しましたが、なかなかワイナリーは導入することができませんでした。まず一つ目に大事なことですが昔から言われていた、ワインがコルクを通して呼吸するからという理由からです。しかし学者によっては、完全に密閉していてもワインはきれいに熟成すると言い、シャンパンなどもコルク栓ですがとても空気を通しているとは思えません。今や一概にどちらが正しいとは言えなくなりました。もう一つの理由は「見た目」の問題で、ある種の習慣のようなところもあるようです。安いワインなら良いけれど、高級なバローロやシャトーワインに合成コルクが使われていたらどうしても興ざめするところがあると思います。ワイナリーは納得しても、購入する消費者にそう思われてしまうと、ワインが売れなくなります。「機能性はわかっていても、売れなくなるかもしれない。」とジレンマに陥ってしまいました。ですがこういった習慣を打破するのは、まだ伝統があまりなく考え方の新しい新興国のワインです。オーストラリアなどのワイナリーはあえて高級ワインにスクリューキャップを採用したり、アイテムによって黄、緑、赤、黒と色を変えて合成コルクを使っています。今まで踏ん切りがつかなかったワイナリーに比べ、このようなワイナリーがこれからのコルク事情を変えて行くかもしれません。最近ワインの新興国ではスクリューキャップが使われだしています。登場したのは1970年代中頃でしたが、当初は大きな成果を得られる事ができませんでした。その最大の理由が、これの優れた点がワイン愛好家達に充分に伝えられていなかったことにありました。また、スクリューキャップよりはコルクを用いたワインのほうが高級感があるという印象が強かったのも事実です。しかしスクリューキャップが持つ優れた保存力が認められるにつれて、多くのワインに採用されるようになってきました。コストが安いだけでなく、密閉性に優れるため酸化防止剤の使用量が3分の1以下に抑えられワインの品質が安定すること、そして誰にでも簡単に開けられるからです。これらの長所を冷静に評価し、安ワインの偏見にとらわれず、ニュージーランドやオーストラリア、カリフォルニアなどは高級ワインでもスクリューキャップの採用が急速に広がっています。本来の品質が完全に保たれたワインを一本でも多く消費者に届けたい、という想いと常に柔軟で新しい感性でワイン造りに励むこの国の姿勢は、フレッシュで芳醇なワインを生み出す力となり最近の高い評価につながっているのかもしれません。伝統的な国々と、新興国では味わいのタイプだけでなく、このような様々な所でも違いを見ることができます。これからもワインは多様化の道を進んでいることは確かです。